性的機能向上のために役立つシルデマンを使用する際、安全な利用が何よりも大切です。
しかし、異なる薬物との併用には慎重が必要であり、特に禁忌薬や注意薬との組み合わせには深刻な健康リスクが潜んでいます。
この記事ではシルデマンとの併用ができない薬(併用禁忌薬)や、併用に注意が要る薬(併用注意薬)を紹介するとともに、飲み合わせに注意が必要な飲み物などの情報も解説します。
飲み合わせが禁忌にあたる薬
併用禁忌薬とは、異なる薬物を同時に使用する際に、その組み合わせが健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、同時に使用することが禁止されている薬物のことを指します。
シルデマンの有効成分であるシルデナフィルには、併用禁忌薬に該当する薬がいくつか存在します。
以下は、バイアグラの添付文書にある「10.1 併用禁忌(併用しないこと)」の項目に記載されているシルデナフィルの併用禁忌薬です。
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
硝酸剤及びNO供与剤 ニトログリセリン 亜硝酸アミル 硝酸イソソルビド ニコランジル等 | 併用により、降圧作用を増強することがある。 | NOはcGMPの産生を刺激し、一方、本剤はcGMPの分解を抑制することから、両剤の併用によりcGMPの増大を介するNOの降圧作用が増強する。 |
アミオダロン塩酸塩 (アンカロン)(経口剤) | アミオダロン塩酸塩によるQTc延長作用が増強するおそれがある。 | 機序不明。類薬とアミオダロン塩酸塩の併用により、QTc延長があらわれるおそれがあるとの報告がある。 |
sGC刺激剤 リオシグアト(アデムパス) | 併用により、症候性低血圧を起こすことがある。 | リオシグアト投与によりcGMP濃度が増加し、一方、本剤はcGMPの分解を抑制することから、両剤の併用によりcGMPの細胞内濃度が増大し、全身血圧に相加的な影響を及ぼすおそれがある。 |
硝酸剤及びNO供与剤
硝酸剤は、心臓病患者や狭心症(狭心症性胸痛)の治療に使われる薬物で、一般的な硝酸剤にはニトログリセリンが含まれます。
シルデマン(シルデナフィル)と硝酸薬(硝酸剤およびNO供与剤)の併用は非常に危険であり、重大な健康リスクを伴います。硝酸薬は血管平滑筋への一酸化窒素(NO)の作用により血管拡張を促進する薬物であり、心臓疾患や虚血性心疾患の治療に広く使用されています。一方で、シルデマンは勃起をサポートするために血管を拡張させる作用があります。
これらの薬物を同時に使用すると、以下の健康上のリスクが生じる可能性があります。
- 血圧の急激な低下: シルデマンと硝酸薬の併用により、血管が急速に拡張し血液の流れが増加します。これにより血圧が急激に低下し、めまい、ふらつき、失神などの症状が現れる可能性が高まります。急激な低血圧は重大な健康問題を引き起こす可能性があります。
- 心臓への負担: 低血圧により心臓への酸素供給が減少し、心臓への負担が増加します。これは、心臓疾患を抱える患者にとって特に危険であり、心臓発作などの重篤な合併症のリスクが高まります。
- 副作用の増加: シルデマンと硝酸薬の併用は、それぞれの副作用を増加させる可能性があります。頭痛、ほてり、めまい、吐き気などの副作用がより重度になることがあります。
国内で報告された症例では、高血圧、糖尿病、不整脈治療中の患者がシルデナフィルと硝酸薬を同時に使用した結果、心肺停止状態に陥り死亡するという重篤な事例がありました。
したがって、シルデマンを服用している場合、または硝酸薬を使用している場合は、これらの薬物を同時に使用しないように注意が必要です。医師との相談なしにこれらの薬物を併用することは避け、健康リスクを最小限に抑えるためには医療プロフェッショナルの指導を仰ぐべきです。
硝酸剤には様々な種類の薬があります。以下に該当する薬を服用中の場合、シルデマンを服用できません。
成分名 | 商品名 |
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ニトログリセリン | ニトログリセリン(静注・点滴静注)、ミリスロール注、ニトロダームTTS、バソレーターテープ、ミオコールスプレー、ミニトロテープ、ミリステープ、冠動注用ミリスロール、ニトロペン舌下錠、バソレーター注など |
硝酸イソソルビド | ニトロール(Rカプセル・点滴静注・錠・スプレーなど)、硝酸イソソルビド(錠・徐放錠・徐放カプセル・テープなど)、フランドル(錠・テープ)など |
一硝酸イソソルビド | アイトロール錠、一硝酸イソソルビド錠など |
ニコランジル | シグマート(錠・注)、ニコランジル(点滴静注・錠)など |
亜硝酸アミル | 亜硝酸アミル「AFP」 |
アミオダロン塩酸塩
アミオダロン塩酸塩(商品名:アンカロン錠)は、不整脈の治療に使用される薬剤です。
アミオダロンは心臓のQT間隔を延長させる可能性があり、この働きが心臓の不整脈を制御するのに役立ちます。一方、シルデナフィルもQT間隔を延長させる可能性があることが報告されています。アミオダロンとシルデマンを併用すると、QT間隔の延長が相加的に増加し、不整脈や心臓リズムの異常のリスクが高まる可能性があります。
またアミオダロンとシルデナフィルはいずれも血圧を下げる可能性があるため、併用すると低血圧のリスクが増加します。低血圧はめまい、失神、意識喪失などの危険な状態を引き起こす可能性があります。
さらにアミオダロンとシルデマンの併用は、心臓への負担を増加させる可能性があり、心臓に対する負担が高まると心臓イベントや不整脈のリスクが増加します。
sGC刺激剤(リオシグアト)
リオシグアト(商品名:アデムパス)は、慢性血栓性肺高血圧症および特発性肺動脈性高血圧症といった、肺動脈性高血圧症の一部の形態の治療に利用される医薬品です。
シルデナフィルは勃起をサポートするために血管を拡張させ、リオシグアトも同様に血管を拡張させる作用があります。これらの薬物を同時に使用すると、その効果が相乗的に働き、血圧が急激に低下する可能性があります。急激な低血圧は、めまい、ふらつき、失神などの症状を引き起こし、患者の安全を脅かす可能性があります。
低血圧により、心臓への酸素供給が減少する可能性があります。これは、特に既に心臓疾患を患っている患者にとっては重大なリスクとなります。心臓への負担が増加すると、心臓発作などの深刻な合併症の発生リスクが高まります。
飲み合わせに注意が必要な薬
併用注意薬とは、複数の医薬品を同時に使用する際に、特定の薬物との併用に関して慎重さが必要であることを示す医薬品の添付文書に記載された注意事項です。
シルデマンの有効成分であるシルデナフィルには、併用注意薬に該当する薬がいくつか存在します。
以下は、バイアグラの添付文書にある「10.2 併用注意(併用に注意すること)」の項目に記載されているシルデナフィルの併用注意薬です。
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
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チトクロームP450 3A4阻害薬(リトナビル、ニルマトレルビル・リトナビル、ダルナビル、エリスロマイシン、シメチジン、ケトコナゾール、イトラコナゾール、エンシトレルビル フマル酸等) | リトナビル、エリスロマイシン、シメチジンとの併用により、本剤の血漿中濃度が上昇し、最高血漿中濃度(Cmax)がそれぞれ3.9倍、2.6倍、1.5倍に増加し、血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)がそれぞれ10.5倍、2.8倍、1.6倍に増加した。 低用量(25mg)から投与を開始するなど慎重に投与すること。 | 代謝酵素阻害薬によるクリアランスの減少 |
チトクロームP450 3A4誘導薬(ボセンタン、リファンピシン等) | 本剤の血漿中濃度が低下する。 | 代謝酵素誘導によるクリアランスの増加 |
降圧剤 | アムロジピン等の降圧剤との併用で降圧作用を増強したとの報告がある。 | 本剤は血管拡張作用による降圧作用を有するため、併用による降圧作用を増強することがある。 |
α遮断剤 | ドキサゾシン等のα遮断剤との併用でめまい等の自覚症状を伴う血圧低下を来したとの報告がある。 降圧作用が増強することがあるので、低用量(25mg)から投与を開始するなど慎重に投与すること。 | 本剤は血管拡張作用による降圧作用を有するため、併用による降圧作用を増強することがある。 |
カルペリチド | 併用により降圧作用が増強するおそれがある。 | 本剤は血管拡張作用による降圧作用を有するため、併用による降圧作用を増強することがある。 |
チトクロームP450 3A4阻害
チトクロームP450 3A4(CYP3A4)阻害薬とは、肝臓や他の組織で存在する酵素である「CYP3A4」の活性を抑制する作用を有する薬全般のことです。
CYP3A4阻害薬には、抗生物質や抗真菌薬、抗HIV薬、胃酸抑制剤など、ジャンルを問わず非常に多くの種類の薬が該当します。
シルデナフィルは、肝臓で代謝される過程でCYP3A4が重要な役割を果たしています。他の薬剤がCYP3A4を阻害すると、シルデナフィルの作用に関わる重要なプロセスが影響を受ける可能性があります。
他の薬剤とCYP3A4を同時に阻害することで、シルデナフィルの作用が予想以上に強まり、それに伴って思いもよらぬ副作用が現れる可能性があります。また、薬物の代謝が遅延することで、シルデマンが体内に滞留しやすくなり、半減期が引き延ばされる可能性も考えられます。
チトクロームP450 3A4誘導薬
チトクロームP450 3A4(CYP3A4)誘導薬とは、先述したCYP3A4阻害薬とは逆に、代謝酵素であるCYP3A4を活性化または増加させる薬物のことです。
CYP3A4誘導薬にも、ステロイドや抗酸菌薬、抗ウイルス薬など、非常に幅広い種類の薬が含まれます。
CYP3A4誘導薬とシルデマンを併用すると、CYP3A4の活性が増加し、シルデナフィルの代謝が急速に進行する可能性があります。
その結果、シルデナフィルの血漿中濃度が低下し、期待される効果が得られなくなる可能性があります。
降圧剤
降圧剤とは、血圧を下げるための薬物の総称です。高血圧症やその他の心血管系の疾患を治療するために使用されます。
シルデナフィルは血管拡張作用があり、これによって血圧が若干低下する傾向があります。同様に、一部の降圧剤も血圧を下げる作用があるため、これらを同時に使用すると降圧作用が相乗的に増強され、めまいや立ちくらみが起こるリスクがあります。
併用自体は一部の場合で可能ですが、個々の体質によっては危険を伴うことがあります。そのため、必ず医師に相談し、適切なアドバイスを得た上で服用するようにしましょう。
α遮断剤
α遮断剤も降圧剤の一種です。高血圧症治療薬のほか、前立腺肥大症治療薬の一部も、このα遮断薬に該当します。
ほかの降圧剤と同様、α遮断剤にも血圧を下げる効果があるため、シルデナフィルとの併用によってその降圧作用が相乗的に増強される可能性があります。
めまいや失神などの症状が引き起こされる可能性があるため、シルデナフィルと併用する際には必ず医師に相談し、適切な指導を受けるようにしてください。
カルペリチド
カルペリチドは、急性心不全治療薬のひとつです。
シルデナフィルと同様の血管拡張作用を有しており、両剤を併用すると降圧作用が増強されるおそれがあります。
めまいや立ちくらみなどの副作用がおきるリスクが高くなるため、カルペリチドとシルデナフィルの併用は医師の指導のもとで行う必要があります。
頭痛薬や風邪薬などの市販薬とは併用できる?
シルデマンは、市販の頭痛薬や風邪薬(総合感冒薬、咳止め、去痰薬、うがい薬など)と併用しても問題ありません。
花粉症治療薬や胃薬などの市販薬とも併用できます。
ただし、病院で処方される抗生物質(エリスロマイシンなど)や、胃酸分泌抑制剤(シメチジンなど)の中には、シルデマンとの飲み合わせが悪い薬があるので注意が必要です。
頭痛薬を併用する際には飲み方に要注意
先述したように、シルデマンと頭痛薬を併用するのは特に問題ありません。
両者は効果を実感できるまでの時間と効果の持続時間がほぼ同じであるため、同時に服用することが推奨されます。
ただし、飲み方には注意が必要です。シルデマンは空腹時に服用することで最大の効果を発揮しますが、ロキソニンなどの消炎鎮痛剤は、胃粘膜を荒らす副作用があるため、空腹時の服用は避けるべきです。
そのため、胃の弱い方はシルデマンや頭痛薬を服用する際に、胃薬も同時に摂取することで胃の負担を軽減できます。
飲み合わせに注意が必要な飲み物
以下に該当する飲み物は、シルデマンとの飲み合わせに注意が必要です。
牛乳
牛乳に多く含まれる脂肪分は、シルデマンの有効成分であるシルデナフィルの吸収を妨げてしまう可能性があります。これは、牛乳の脂肪が胃や腸の表面に膜を形成し、シルデナフィルの効果的な消化吸収を阻害することに起因します。
シルデマンを服用する際には、できるだけ脂肪分の多い牛乳や他の脂肪を多く含む飲み物を控えることが望ましいです。これにより、シルデマンの効果が最大限に発揮され、治療効果が向上する可能性があります。
牛乳とシルデマンを同時に摂ることで、シルデマンの吸収が悪くなるため、効果を期待する際には飲み合わせに気を付けることが重要です。
カフェイン飲料
シルデマンとコーヒーやエナジードリンクなどのカフェインを含む飲み物を一緒に摂取しても特に問題はありませんが、いくつか留意すべき点があります。
まず、シルデマンの服用に際してカフェインを含む解熱鎮痛薬を併用している場合は要注意です。これにより、過剰なカフェイン摂取が生じ、頭痛や吐き気、不眠などの症状が現れる可能性があります。健康な成人の場合、1日の最大カフェイン摂取量は400mgまでとされています。そのため、注意深くカフェインを摂取する必要があります。
心血管系の疾患を患っている場合は、コーヒーや他のカフェイン飲料とED治療薬を併用するのは避けるべきです。これは、カフェインが心臓に負担をかける可能性があるためです。一方で、心血管疾患のない成人は、シルデマンとカフェインを同時に摂ることは可能ですが、摂取量には注意が必要です。
グレープフルーツジュース
シルデマンとグレープフルーツジュースを同時に摂ることは避けるべきです。なぜなら、グレープフルーツに含まれる成分である「フラノクマリン」が、服用した薬の成分を分解する体内酵素の働きを弱める可能性があるからです。
特にグレープフルーツジュースは果汁が濃縮されており、フラノクマリンの量が増加しているため、代謝酵素を阻害する作用も強まります。これにより、シルデマンの効果や副作用が予測できない影響を受ける可能性が高まります。
アルコール
基本的にシルデマンとアルコールの飲み合わせは問題ありません。
ただし、アルコールの摂取量には注意が必要です。
アルコールの多量摂取は神経伝達機能を低下させ、性的な刺激が陰茎に伝わりにくくなる可能性があります。これにより、勃起や射精に関する性的な機能に影響を与え、逆に望ましくない結果を招くことがあります。
したがって、アルコールを適量で摂取することが重要です。
シルデマンの飲み合わせについてまとめ
シルデマンと異なる薬物との併用には慎重が必要です。
硝酸剤、NO供与剤、アミオダロン塩酸塩、sGC刺激剤などとの同時使用は血圧急激な低下や心臓負担の増加といった深刻な健康リスクを引き起こす可能性があります。
またCYP3A4阻害薬、CYP3A4誘導薬、降圧剤、α遮断剤、カルペリチドとの併用も慎重が必要で、これらの薬物との組み合わせにより予期せぬ副作用が発生するリスクがあります。
シルデマンのほかに服用中の薬がある場合には、薬の組み合わせに関して医師に相談すると安心です。
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